SpaceXの宇宙葬が太平洋で終わった皮肉な物語 - 166人の遺灰と宇宙マリファナの運命

宇宙に遺灰を届ける。そんな夢のようなサービスが実際に行われています。人類が星々に手を伸ばすこの時代、SpaceXは「宇宙葬」という新たな選択肢を家族に提案しました。小型カプセルに込められた166人分の遺灰は、ロケットに乗せられ、地球の青い曲線を背景に静かに軌道を描きます。その瞬間、宇宙という舞台が亡くなった方々と家族をロマンティックに繋げてくれるはずでした。

ところが、現実は時に皮肉です。カプセルが地球に帰還する際、パラシュートが不意に開かず、葬送の物語は太平洋の深海へと変わってしまいました。遺灰を家族へ返す約束は叶わず、みな静かに海底へと還っていきます。メールで届く会社からの通知には「特別な海葬」としての慰めの言葉。失われたものの大きさを前に、宇宙と海、その境界が淡く溶け合っていくように感じました。

さらに驚くべきことに、このカプセルには大麻の種子も同乗していたのです。研究者たちは火星での植物栽培の可能性を探っていて、今回の種も未来の実験材料でした。でも「宇宙マリファナ」も時ならぬ終着点―太平洋の底に沈んでしまいました。人類の挑戦の裏側で生まれる、ひとさじのユーモアと切なさ。

僕は科学ジャーナリストとして見つめてきたけれど、商業宇宙開発が拡大するほど、こんな奇妙な物語はきっと増えていく。未知に挑む勇気と、思いもよらぬ結末。私たちはこれから、宇宙と地球、そして人間の“送り方”について、もっと多くの対話を重ねることになるだろう。時に壮大で、時に皮肉な宇宙時代の幕開けを、あなたならどう感じますか？